「3-4全レース買い」の結果、つづき。
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●11R、ダイヤモンドステークス(GⅢ)(承前)
さて、レース本番。馬連1-8の馬券を帽子の中に隠し(ポケットのいまいましいはずれ馬券と一緒にしたくなかった)、いざゴール前へ。
この一戦に佐々木あららの34歳の運勢すべてがかかっております。この頃から3-4は絶対こないという確信を持って行動する私。……趣旨が違っていることとか、気にしないように。
東京競馬場の芝コースはダートコースに比べて観客席にぐっと近く、なかなか迫力があります。3400メートル、という長いレースですから、コースをほぼ1周半走ります。ゴール前にいると馬は2回、目の前を通る勘定になります。
1周目、8番アドマイヤモナークは、3~6番手くらいのいい位置につけ、僕らの前を駆け抜けました。これはまあ予定通り。そして、期待の1番コンラッドはかなり後方からの競馬になりました。がーん。
馬群が向こう正面へ消えると、場内は一瞬の静けさに包まれます。ターフビジョンに映されるレース展開をぼうっと見ているしかありません。そして、祈るしかありません。
やがて低く轟くひづめの音とともに、坂の向こう側から、僕にはまるで地平線のように見える遠い遠いあの坂の向こう側から、馬の群れが小さく、小さく見えてきます。それとともに男どもの怒声・歓声がフェードイン。川中島の合戦って絶対こんな感じだったはずです。音だけで言えば。
長い直線を息せき切って駆けてきた馬の先頭には、アドマイヤモナークがいました。2着以下を2馬身以上引き離し、軽快に直線を疾走しています。そして2着以下は混戦。ダンゴ状態、というやつでしょうか。
そのダンゴの中に、我が1番コンラッドは、おりませんでした。
コンラッドは、それよりちょっと遅れたところのインコース、前の馬に詰められた狭いところで、窮屈そうに走っておりました。
嗚呼。佐々木あらら、玉砕。
●そして奇跡は舞い降りる
と、そのときです。
コンラッドの前が一瞬だけ、開きました。前の馬が若干、外側にふくらんだのです。
鞍上の田中勝春は、その隙を見逃しませんでした。
ゴール目前100メートルを切ったあたりでしょうか。
ダンゴ状態だった2着争いに、内からコンラッド。
コンラッド!
馬の激しい呼吸、高鳴る心拍、そして、3km以上を走って乳酸いっぱいになった体中の筋肉の痛みを、私は自分のことのように感じていました。陸上部だった頃のトラウマで、ゴール前、というだけで私の動悸は速くなってしまうのです。
酸素不足の血管と動かない脚、つらさと苦しさしか感じない最後の数メートルを、精神力だけで転がるように進むコンラッド。
ああ、コンラッド。お前は、私だ。
結局、2着~5着あたりが集団になって、ゴールラインを駆け抜けました。
競馬に詳しくない方のために説明しておきますと、通常、レースが終わりますと、間髪を入れず、ターフビジョンという大きな液晶テレビみたいなものに、5位までの馬番が表示されます。3-4-6-15-18、みたいな感じに。
しかし、このレースは、1着8番アドマイヤモナーク以外の数字は表示されず、その横に「写」と表示されました。2着以下がすべて写真判定、という意味です。写真を見ないと判断できないほどの接戦、ということです。
最終結果の発表されるまでの長いこと長いこと。
スローVTRで見る限りでは、コンラッドは若干届いていないように見えました。場内に何度も再生されるゴールの瞬間の映像では、コンラッドは首を引いているのです。馬は顔が長いですから、首を引いている馬と鼻を突き出している馬とは数十センチの差が生まれます。コンラッドよ。なぜ最後の最後に首を曲げた?
諦めておりました。ただ、いいレースをしてくれた、いい夢を見せてくれたことだけで満足しよう、と自分に言い聞かせておりました。
そして、がやがやとまだレースの興奮を引きずった騒がしい場内に、結果が発表されました。
2着……1番。
コンラッドです。コンラッドが2着です。帽子の中でムレにムレた1-8の馬券は、一瞬にして11600円の価値を持ちました。佐々木あららのバースデイ運試しのトータルプラスが決定した瞬間でした。
けれど、私はそんなことよりも、コンラッドの見事な差し切りに(2位だが)歓喜していたのです。……いや、今、嘘をつきました。私は、コンラッドなんかどうでもいいっちゃよくて、ただただ大損こかなかったことに安堵して狂喜乱舞していたのです。
●分析と反省
その後、この運試しをどうとらえるべきか、メガネ美女と二人、登戸駅前の「土風炉」にて語り合いました。
その結果、
●あまり34歳という年齢に拘泥せず生きれば吉
●とりあえず困ったときは誰かラッキーそうな人の言葉に乗っとけ
●2月の競馬って、寒い
というご託宣であろう、ということでまとまりました。
というわけで、34歳であることを忘れ、未熟者の本性をさらけ出しつつ2008年を踏みつぶしていきたいと思います。
このようなご託宣が出た以上は、みなさまにこれまで以上にご迷惑をかけながら転がっていくことになると思いますが、何卒、軽蔑しつつもこれまでともどもお付き合いいただければうれしく存じます。
長々ありがとうございました。
今後とも、佐々木あららを、どうぞよろしくお願いします。
どうしよっか、これ。