2006年 10月 20日
連作『クララ』(2006)
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クララ 佐々木あらら
相棒にクララと名付け毎朝が立った立ったで潤っている
笑うしかないほど寝坊した朝もインドネシアは常夏だろう
燃えるたびタカハシさんを連呼する隣の美女の顔を知らない
オトナ語で会議(*1)は踊り議事録にうんこうんこと書きとめている
*1)目覚めたら二度と会えない女たち、よりは重要ではない会議
オトナ語の電話を置いてお清めにちんこまんことつぶやいておく
職場では無視しあうって約束を無視する僕を無視する君だ
何事もゴメンで済んで警察の要らない国に移り住みたい
飽きてきた女に返す「生協の白石さん」の口調のメール
つまんない号は買わない月もある雑誌のように付き合えたなら
俺じゃなく背中のトドがハーレムを求めてしまうキャバクラ日和
エロマンガ島を見つけて大はしゃぎしていた俺の今の年収
合コンもヤマ場を迎え戦友に便所で諭す「ワン・フォー・オール」
「おいしい」と微笑む美女の舌先で溶かされてゆく魚の死骸
二万回ついた嘘だが君といるこの瞬間を忘れはしない
口説いてはならない人と飲むときも俺のクララは立つから困る
ディズニーシー(*2)に連れてってって鳴く猫に俺はともかくクララが夢中
*2)君たちの金が欲しくて浦安にネズミ男が建てた楽園
別れたくないっていうか愛されたまま逃げるのがめんどうくさい
モザイクをかける気持ちで暗くした ブサイクというほどじゃないけど
近づけば近づくほどに色褪せる君にそれでも近づいていく
ご希望のとおり眼鏡をかけたままアンジェラ・アキをかけたまました
それなりに心苦しい 君からの電話をとらず変える体位は
「黒ひげ」のように何度も刺してゆく 最後に君が飛んでくように
外に出すのが愛なのか中で出すのが愛なのか迷って出した
人生がヒマつぶしでも そのヒマにつぶされてゆく夢ばかりでも
風呂のフタをあけた途端に思い出す宿題だとか記念日だとか
笑いつつひとり布団を敷く夜もインドネシアは常夏だろう
つたなさがいとおしいからときどきは浮気のように左手でする
愛なんて体に悪いだけだから泣いてる俺はまちがいなのだ
(『佐々木クララ』(2005)に一年かけて手を入れた現在地。
控えめに、ブログランキングの協力もお願いしておきます)
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by sasakiarara
| 2006-10-20 21:54
| 短歌連作