ハニーマン(連作30首)
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honey 【自動】お世辞[おべんちゃら]を言う、へつらう、取り入る
honey man〈米俗〉 (女の)ヒモ
遠くまで来たのに気づく 見慣れないサイズのブラを干すとき いつも
さんずいに夜と書くから僕たちの夜はいろんな液でびしょびしょ
舌先はこう使えよと示したい もっと体がやわらかければ
新しい機種は操作に慣れるまで面倒だから君は五年目
紀子さまが男児を産んだ朝にさえ生でしたのを責められている
へそくりを盗んで挑むパチンコが儲かりませんもう借りません
休日の晴れた気持ちがリモコンを探す時間に埋もれてしまう
世界には向かない俺の土曜日の午後のテレビはゴルファーだらけ
虚構って言葉の意味を知っている 時東ぁみの伊達眼鏡です
僕だって(正しいブラの干しかたをググってみたり)努力はしてる
逝くときは千円札の漱石のように静かに駆逐されたい
童貞の頃の熱さは戻らない 確かにすごい動画だけれど
棒読みであえぐ女優の行く末に心を痛めすることはする
愛もなく煮た肉じゃがを食べている 料理は愛情あるいは無情
十代のころ好きだった本をふと立ち読みしちゃうみたいに浮気
アイドルが見分けられなくなってきて誰と寝たって愛でいっぱい
もう若くないのか俺は 左手でブラのホックがはずせる俺は
朝帰りの僕をかすめて飛んでゆく枕が出した今季最速
二時間後 口げんかには勝っていて 謝れないのは今後の課題
真っ黒なカバンを抱いて逃げている セミが死ね死ね鳴いてる道を
ジャイアンがもうこの町にいないのは空き地が消えたせいなのだろう
どこまでも泳ぐのだ鮭! 吉野家の朝定になる夢など捨てて