寝(る)前(に)君(に)書(く)
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一滴も飲めないらしい
ほんとうは酒豪なのかもしれないが
飲まないからわからないまま
もしかして別れ話をする日に
やおら津波のように
一升の酒を飲み干してから
審判がおこなわれるのかもしれない
そんな恐怖にふるえながらも
二人で酒を飲む
僕だけ飲む
最近はテレビを見ながら
ほら最近のテレビは不備ばかりなので
もしかしたら僕たちのために
わざわざ不備を盛り込んでるのかと疑うほど
不備ばかりだから
そんなのを指摘しながら飲む
どうだ
昭和のような平和さだろう
昭和の平和のコスプレをしていると言ってもいい
ほんとうはすべて嘘なのかもしれないが
言われないからわからないまま
もしかしてこの国が終わる日に
やおら津波のように
すべての冗談が弾圧に変わって
審判がおこなわれるのかもしれない
そんな恐怖にふるえながらも
二人で酒を飲む
僕だけ飲む
ところで
君は
不安のまま未来をつくったことがないだろう
うまくやるか、未来をつくらないか
どちらかのグループに所属することで逃げてきただろう
だいじょうぶ僕もそうだ
でもどこかでやっておくといい
責任をとらないままの軽い言葉の人が
世界には多すぎる
その軽さを知るのに必要な手続きを
早く済ませるといい
未知に向けられた砲台の
人が入れるか入れないかのサイズの弾頭に
こっそり親に内緒で入り込み
発射までのカウントダウンを聞く瞬間を
independence day と呼ぶのだと
君にはもう教えてただろうか
家人も僕もおそらく
その砲台で打ち上げられ
最高の興奮を得て
何かしらの失敗をして
でも人生としては何も失敗ではなく
何周かしてここにいる
その何周かについて思いながら
夕暮れに注ぐ金宮焼酎のために
君も
早く挑戦するといいよ
もしくは
僕を追い抜いて大人になるといいよ